
はじめに:「これ知ってますか?」と詰められた、自動車王の答え
1919年のアメリカ。
自動車王ヘンリー・フォードは、ある新聞社を名誉毀損で訴えていました。
新聞は彼のことを「無知者」と書き、「学校教育もろくに受けていない田舎者だ」と批判したのです。
裁判の証人席で、相手側の弁護士はフォードに次々と一般教養の質問を浴びせます。
「南北戦争はいつ起きた?」
「アメリカ独立戦争で誰が勝った?」
——フォードはその多くに正確に答えることができませんでした。
記者たちが「これは敗訴か」とざわつき始めたそのとき、フォードは静かにこう言いました。
「私の机の上には電話がある。
必要なときに、その分野の専門家を呼び出し、正確な答えを得ることができる。
なぜ私自身の頭を、そうした雑学で埋め尽くさなければならないのか?」
その場は一瞬で静まり返りました。
フォードは、「答えそのもの」を持っていることよりも、「正しい答えに最短でたどり着く手段」を持っていることの価値 を、堂々と示したのです。